テオティワカンの建造物


●ピラミッド状基壇の建築
 「月のピラミッド」、「死者の通り」及びテオティワカンの特徴的な建築様式である「タルー・タブレロ」様式に関しては、テオティワカンの建造物(新大陸考古学講座(第3回、2P))を参照。
 テオティワカンの建造物は、単に土を盛ってピラミッド状の基壇を作ったのではなく、綿密な基礎工事(システマ・コンストゥルクティボ:Sistema Constructivoと呼ばれている)を行って作られた。
 3段の基壇(フラットフォーム)の上に上部建造物がある例を見てみよう(図1-3-1参照)。
(第1段階)
 日干し煉瓦等を使って第1段目の基礎となる壁が作られる。基壇によっては、第1段目から3段目までの基礎がすべて作られる場合もある(1-2の部分)。
(第2段階)
 基礎の壁と壁の間に、土や石が入れられ(rellenoと呼ぶ)第1段目の基壇が完成する。その後、第2段目の基壇の基礎工事が行われる。
(第3段階)
 同様に第2段目の基礎の壁の間に土や石が入れられ、第3段目の基礎の部分が作られる。
(第4段階)
 第3段目の基礎の間に土や石が入れられ、ピラミッド状の基壇が出来上がる。最初に3段目までの基礎工事が行われた場合は、1段目から3段目までの基礎の壁の間に土や石が入れられ基壇が出来上がる(3-4の部分)。
(第5段階)
 斜めの壁(タルー)を整形して、垂直の壁(タブレロ)を作り出す。タルー・タブレロ様式の完成。
(第6段階)
 階段を付けて、上部の部屋を作り建造物は完成する。
図1-3-1


●建造物の断面図
 建造物は、基壇の部分と上部の部屋の部分から構成されている。ここでは、建造物の断面図をみてみる。
(a),(a'):aの部分は、テペタテと呼ばれる遺物の出土しない層(地山)である。a'は地山を平らに
      するために土を盛り整地した層。このように人工的に整地する場合もあるが、地山の上
      に堆積した自然の層によって平らになる場合もある。
  (b):基礎工事の壁の間にいれられた石と土の層。
  (c):日干し煉瓦(アドベ)を使ってつくられた基礎工事の壁。
  (d):石で作られた基礎工事の壁。上部の建造物の壁の基礎になる。
  (e):上部の建造物の外側の壁、あるいは部屋と部屋を区切る壁。木材も使用されている。
  (f):上部の建造物の漆喰の床面。
図1-3-2


●建造物の復元図
 現在、「死者の通り」に面して作られた多くの建造物は、ピラミッド状の基壇の部分しか残っていないが、当時は図1-3-3のように基壇の上にいくつかの部屋を持つ建造物が建てられていた。基壇の垂直の壁であるタブレロの部分には、現在でも一部分であるが赤の顔料が残っていることから、当時は「赤」等の顔料でそれぞれの壁は彩色されていたことが窺われる。
図1-3-3