メキシコレポートNo.3


●2003年8月30日配信
 今回は、当時の交易を考えてみましょう。当時の交易品で重要だったのは、黒曜石、ヒスイ、土器、貝製品等の原産地が限られる物です。黒曜石は、日常品としても(ナイフとしての機能を持つ)重要であり、また様々に加工され墓の副葬品としても重要な物資でした。テオティワカンの近くのオトゥンバが黒曜石の原産地でした。おそらくテオティワカンの支配者は、この黒曜石の原産地を支配しまた黒曜石製品を各地に分配することにより周辺の地域も支配していたのでしょう。また、パチュウカで取れる緑色の黒曜石は、マヤのエリートにとっては、テオティワカンとの関係を示し、また自らの権威を示す重要な品物でした。パチュウカ産の緑色の黒曜石はマヤの様々な遺跡で見つかっています。
 ヒスイも当時のエリート階級の権威の象徴としてとても重要視されていました。ヒスイは実用品ではなく、首飾りや耳飾等の装飾品でした。テオティワカンで見つかるヒスイはグァテマラ高地のものと見られています。テオティワカンは、現在のガァテマラ・シティにあるカミナルフユー遺跡と強い関係にありましたので、おそらくカミナルフユー経由でもたらされたのでしょう。土器は、地元で作られ地元で消費されるものが大部分ですが、中には交易品として移動した土器も多くあります。
 当時の社会は、けっして閉鎖された社会ではなく、開放された社会であり多くの地域と繋がりを持っていました。交易の研究分野は、化学分析等を使い原産地を同定したり、物の分配のシステムを研究(当時の社会状況が分かる)する分野で考古学では重要な研究分野です。



黒曜石
 写真の中央には、黒曜石の原石があります。原産地のオトゥンバから原石の状態でテオティワカンに運ばれ、テオティワカンで製品化されました。テオティワカンでは多くの黒曜石の加工場が見つかっています。製品としては、槍先(写真の左側)やナイフ(写真の右側)が一般的ですが、黒曜石で作った人形(写真の左側にわずかに見えるものです)や不定形の製品(写真の左上)も見つかっています。月のピラミッドの生贄の墓からは、50cm程の大型の人形、やり先、不定形の製品が見つかっています。



貝製品
 メキシコの中央高地にあるテオティワカンでは、貝はとれないのですが墓の副葬品としてこれらの製品がよく見つかります。月のピラミッドの生贄の墓からもほら貝のような大型の貝やオレンジ色の貝の耳飾などが見つかっています。また、羽毛の生えた蛇神殿の石彫には貝が彫られています。「貝→海→生命の源あるいは豊穣」を象徴しているのかもしれません。
ほら貝は、何らかの儀式において楽器としての役割を果たしたかもしれません。
 テオティワカンは、メキシコ湾の近くにある遺跡と関係が深かったので貝類はこの地域から運ばれた可能性があります貝を墓の副葬品としていれる習慣は、メソアメリカだけでなくアンデス地域でもよく見られます。当時の人びとにとって、貝はとても重要な物だったのでしょう。



土器
 土器も交易の製品としてよく見られる物です。写真の土器は、薄手オレンジ土器と呼ばれるもので、テオティワカンの南にあるプエブラで作られテオティワカンにもたらされました。その他、メキシコ湾岸で作られた土器等も見られます。土器の場合は、土器が動く場合と人が動いてテオティワカンの地で自分達のスタイルの土器を作る場合があります。それらを区別するために土器の胎土分析といって化学的に土器を分析し、土器の粘土を構成する元素の違いによって判断することもあります。