アメリカ大陸の呼称について


●新大陸
 「新大陸」という名称は一般的には、ユーラシア、アフリカの旧大陸に対して、新しく発見された南北アメリカ、オーストラリアの大陸をいう。
 この講座では、新大陸として南北アメリカを取り上げる。
図:メソアメリカ文化領域(ラインで囲まれた地域)。

1943年にP.キルヒホフによって提唱された。

引用
江坂輝彌・大貫良夫
1984 『文明の誕生』 講談社



●インディアンズ
 この地域の名称を歴史的に見ると、コロンブスによって1492年に「発見」された当時、インディアスと名付けられた。インディアスとは、15世紀のヨーロッパ世界においてインドを含むアジア方面を漠然とさした名称であった。
 しかし、コロンブスがアジアの一部と信じていたインディアスが、当時のヨーロッパにおいては全くの未知の世界であることを証明したのはアメリゴ・ヴェスプッチであり、その名前から今日使われているアメリカという名称がドイツ人の地理学者であるミューラーによって付けられた。
 スペインは、15世紀後半から19世紀前半までの植民地時代を通して新大陸の植民地をインディアスと呼び、ポルトガルは、ブラジルと呼んだ。ポルトガル領がブラジルと呼ばれたのは、沿岸地帯に大量のブラジルの木(ブラジルボクと呼ばれる)が成育しており16世紀前半には専らブラジルの木の開発が行われたからである。


●ラテンアメリカ
 ラテンアメリカという名称は、19世紀にメキシコに進出したフランス人によって付けられた名前である。この名称は、北のアングロアメリカに対比した文化的概念を表した名称である。植民地時代末期になるとこの地域の人々の間では、本国とは異なる独自性が意識されるようになり、アメリカ人意識が芽生えてきた。そして北アメリカのイギリス植民地が独立してアメリカ合衆国となると、それと区別するためにイスパノアメリカあるいはイベロアメリカと言う言葉が使われるようななった。19世紀にフランスがメキシコに進出すると、以前使用されていたイスパノアメリカやイベロアメリカと言う言葉を避け、メキシコ以南の旧スペイン植民地やポルトガル植民地を独自にラテンアメリカと呼ぶようになった。


●メソアメリカ
 メソアメリカとは人類学や考古学で使用される言葉で、アメリカ大陸の中央部に位置し、南米の中央アンデス地域と並んで先コロンブス期に様々な古代文明が発生した地域を意味する。現在のメキシコ南半分、グアテマラ、ベリーズ、エル・サルバドル、ホンデュラスの西半分およびニカラグアやコスタ・リカの一部を含む(図、参照)。 尚、地理学では北アメリカ、中部アメリカ、南アメリカの呼称を使い、また、政治・経済学では北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカの呼称を使う。従って、この地域は、中部アメリカとか中央アメリカとかメソアメリカなどと呼ばれている。