人類のアメリカ大陸における拡散
●氷河時代の環境 | |
氷期:現在より気候が寒冷で氷河が拡大した時期 | |
間氷期:氷期と氷期のあいだの気候が温暖な時期 | |
もっとも最近の氷期(最終氷期)は、北アメリカではウィスコンシン氷期、ヨーロッパではヴュルム氷期と呼ばれる。 |
●ウィスコンシン氷期の環境 | |
ウィスコンシン氷期はおおよそ8万年〜1万年前の時期に存在し、1万年以降が後氷期となり暖かくなった。氷期には、氷床の拡大に伴い森林が縮小し、草原が出現した。動物では多様な大型哺乳動物群(マンモス等)が生息していた。 | |
シベリアとアラスカの間にあるベーリング海峡はもっとも狭い部分で85kmほどの幅で深さは最深部で42mほどである。最終氷期には海面が100m〜120m 程低下したのでベーリング海峡はユーラシア大陸と北アメリカ大陸を結んで出現する広大な陸地となった。これがベーリンジアと呼ばれるもので、その幅は南北1000kmほどあった。ベーリンジアは、14000 年ほど前から徐々に消滅し、後続の人類の移動を断ち切った。 | |
アメリカ先住民の移動は最終氷期の後期25000年〜14000年前ころに行われたが、この時期はまだ北アメリカには氷床が発達し彼等のゆくてを阻んでいた。しかし、12000年前ごろには、温暖化に伴い北アメリカの氷床はとけはじめ、ローレンタイド氷床とコルデェラ氷床の間に無氷回廊が出現し、人類の南下が可能となった(図参照)。 | |
図:コルディエラ氷床、ローレンタイド 氷床と無氷回廊 引用 関雄二 1995 「第4章 中部アメリカ・南アメリ カでの拡散」 『モンゴロイドの地球(5)最初 のアメリカ人』 大貫良夫 編 東京大学出版会 |
●人類のアメリカ大陸への拡散 | |
12000年前ごろ、ロッキー山脈沿いの無氷回廊を南下した人類は、気候の穏やかな大平原に入り狩猟活動を開始し、さらに南下を続けた。
マーティン博士は、人類のアメリカ大陸での拡散についてシミュレーションを行い、「人類はカナダのエドモントから南米の最南端のフエゴ島まで拡散するのに、約1000年間で成し遂げることができた」と結論付けた。 この最初のアメリカ人は、プロト・モンゴロイドと呼ばれ、われわれ日本人も含まれる今日のモンゴロイドの祖先であったといわれている。彼等は、アメリカ大陸の各地で多くの痕跡を残している。クロヴィス型尖頭器やフォルサム型尖頭器と呼ばれる「やり先」として機能した石器は、広く分布しており、安定した狩猟生活をうかがわせるものである。 近年、ブラジルやチリやアルゼンチンなどでは、12000年前を遡るような古い時代の遺跡が報告されている。最初の人類がいつアメリカ大陸に移動したかについては、現在様々な議論があり決着はついていないが、すくなくとも12000年前には、無氷回廊を南下した人類がいたことには異論はない。 |
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