マヤ低地とテオティワカンの交流:
ティカル-2


●石碑31の図像
 マーティン等の碑文の解読によると、ティカルを手中にいれたシヤフ・カックは、自ら王となることなく、ヤシュ・ヌーン・アイーン1世の後見人として力を及ぼしていた。ヤシュ・ヌーン・アイーン1 世もテオティワカンへの帰属意識を表明するために、メキシコ的ないでたちで石碑に表現されている(マーティン&グルーベ 2002、Martin & Grube 2000)。
  ヤシュ・ヌーン・アイーン1世の息子である第16 代王シヤフ・チャン・カウィール2世が建立した石碑31号の正面には、マヤ的衣装を身につけたシヤフ・チャン・カウィール2世の像が刻まれ、その両側には彼の父であるヤシュ・ヌーン・アイーン1世がテオティワカンの戦士像で刻まれている(図5- 2- 1)。
 図5-2-1
  A:マヤ王の装飾を身に付けたシヤフ・チャン・カウィール2世。右手に持っている頭飾りには
    フクロウが刻まれたメダルがつけられている(図5-2-1: C の部分)。
  B:テオティワカンの戦士像の姿をしたヤシュ・ヌーン・アイーン1世
  C:フクロウが刻まれたメダル
  D:メキシコ様式の槍投器
  E:テオティワカン様式の頭飾りをつけたトラロック像が刻まれた楯
 石碑の裏面には、シヤフ・カックが「到着」から新しい王朝の成立、そしてシヤフ・チャン・カウィール2世の統治までの歴史が刻まれている。
図5-2-1


●石碑31の正面
 マヤ王の装飾を身に付けたシヤフ・チャン・カウィール2世。大部分が150年前に建てられた石碑29(292年の年号を有する)の模倣であり、古王朝の復興を宣言していると言われている。
図5-2-2


●石碑31の側面
 テオティワカンの戦士像の姿をしたヤシュ・ヌーン・アイーン1世。右手には槍投器、左手にはトラロックの顔のついた楯を持っている。
図5-2-3