マヤ文字の特徴


●文字の構成
マヤ文字は、複数の文字素から文字が構成される。
 文字素:はっきり識別可能な意味、音を持つ最小限の記号
 主文字:比較的大きくて丸い形を持つ文字
 接辞 :小さ目で主文字を取り巻く長い一群の文字
図6-2-1では(1)がマヤ文字で「即位」を表す文字である。この文字は(2)で見られるように1つの主文字(C)と3つの接辞(a,b,d)から構成されている。また、(3)は「誕生」を表す動詞で、1つの主文字(e)と2つの接辞から構成されている。


●解読史
*19世紀から1950年以前
(1)フェールステマンの研究(ドイツ人)
 ドレスデン王立図書館員でコデックスの分析マヤの暦について解明した。彼は暦の最初の発見者でなかったが、以前に解明されていたものに、彼自身の見解を加え暦の研究を発展させた。特に、マヤの長期暦(3P参照)には、20進法が使われていることを解明した。
(2)シェルハスの研究 (ドイツ人)
 コデックスに登場する多くの神々の名前を明らかにした。マヤの碑文は大部分が宗教的、神話的なものであるとの仮説が提起され、これが1960年代まで多くの学者の見解となった。
*1950年以降
(1)クノロゾフ(ロシア人)の研究
 ロシアの言語学者であり、16世紀にディエゴ・ランダの残した記録をもとに、マヤ文字が表音文字であることを主張した学者である。
(2)ベルリンの研究(ドイツ人)
 石碑に記載された文字の研究は、イギリス人モーズリーやトンプソン、アメリカ人モーリー等の研究の後、ドイツ人ベルリンによって大きく発展した。彼は、ある文字が特定の遺跡と密接に結びついていることを発見した。正確な意味は不明であったが、その文字が地名あるいは王朝を表している紋章的なものであることは明らかだと思われた。これによって、それぞれの都市国家のシンボルであるいわゆる紋章文字が解明された。
(3)プロスコリアコフ(アメリカ人)の研究
 石碑に記録された日付は、ある支配者とその家族の一生における歴史的出来事を記録している事を証明した。
図6-2-1



●数字の表記
 数字は、様々な文字を使って表記されたが、そのうち最も簡単な表記は、1を表す点と5を表す棒で、点と棒を組み合わせることで1〜19までの数字を表記した。ゼロは貝を表す文字か、様式化された花で表記された。絵文書では、点と棒に変わって、その数に関係ある神の頭像か神の全体像で表されることもあった。
図6-2-2


●マヤ文字は表意文字それとも表音文字?
 マヤ文字は、表意文字的性質と表音文字的性質の両方を持っている。図6-2-3は、貴族を表す文字である。「貴族」を表す場合は、(A)のように表意文字で表すことも可能だし、(B)のように「a ha wa」の発音を示す表音文字で表すことも可能である。
 また、テキストは2行一組にして、上から下、左から右へと読む。一行しかない場合は、上から下へと読む。
    例
     [A] [B] [C] [D]
     [E] [F] [G] [H]
     [I] [J] [K]  [L]
     [M] [N] [O] [P]
のようなテキストがあった場合は、読む順番は「AB」「EF」「IJ」「MN」「CD」「GH」「KL」「OP」である。
図6-2-3